乳がんと診断された方へ|患者さんへ
乳がんについての基礎知識
毎年約6万人の方が乳がんにかかり、約1万2000人の方が亡くなっています。
現在、罹患数では女性のがんのトップとなっており、女性の14人に1人が乳癌に罹るといわれています。
年齢別でみると、40代にピークがありますが、幅広い年齢層で全体的に増加の傾向にあります。
日本人女性の部位別がん罹患数・死亡数(2012年)
年齢階級別乳がん罹患率推移(10万人対)
資料:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター
乳がんとは、乳腺(乳管や小葉など)にできる悪性腫瘍のことです。
乳がんには様々なタイプのものがありますが、大まかにわけると、非浸潤がんと浸潤がんにわかれます。いずれのタイプなのかにより、治療に対する考え方が異なります。
- 非浸潤がんとは、がんが発生した場所(乳管や小葉の中)にとどまっているタイプのものです。理論的には、転移を起こさないタイプということになります。乳房の局所の病気と考えます。頻度は、発見される乳がんの1-2割程度ですが、近年の検診マンモグラフィの普及による早期発見により、増加傾向にあります。
- 浸潤がんとは、がんが乳管や小葉の中にとどまらず、近傍の組織に入り込んだり、血管・リンパ管から全身に移行するタイプのものです。転移などを起こす可能性のあるタイプということになります。全身の病気と考えます。
浸潤がんは、さらにいくつかの異なる性質のグループに分類されることが遺伝子検査により判明してきました。実際にはホルモン受容体、HER2、核/組織グレードや癌細胞の増殖性の指標であるa"Ki-67index"という検査などにより分類します。この分類によって予後や治療による反応が異なると考えられています。
乳がんの治療にはどのようなものがあるか?
乳がんの治療法には、3つの柱があります。手術療法・放射線療法・薬物療法です。薬物療法には、抗がん薬・ホルモン療法・分子標的薬(抗HER2薬など)が含まれます。
手術療法や放射線療法は、乳房やわきのリンパ節といった局所に対する治療法です。それに対して、薬物療法は全身に対する治療法です。
まず、さまざまな検査でがんの状況を調べます。マンモグラフィ検査や超音波検査、造影MRI検査などの画像検査でがんの広がりの程度を調べます。また、針生検でがん組織の一部を採取し、乳がんの性質、ホルモン受容体やHER2などを調べたり、がんの増殖の程度を評価したりします。こうした情報をもとに治療方針を検討します。
非浸潤がんの治療の主体は手術療法です。非浸潤がんは乳房内にとどまるがんであり、手術で取り除くことで完治すると考えられていますが、後年になって新たな乳がんが発生する場合があるため、手術後に放射線療法やホルモン療法を行う場合があります。
浸潤がんは手術療法に加えて薬物療法を行う場合が多くなります。薬物療法には手術前に行われる「術前療法」と手術に行われる「術後療法」があります。治療後は定期的な経過観察が行われます。