TOP > 患者様へ > 乳がんと診断された方へ

患者さんへ

乳がんと診断された方へ|患者さんへ

薬物療法について

薬物療法には抗がん薬・ホルモン療法・抗HER2薬などがあります。薬物療法を行う際には、がんの進行度合い(がんの大きさやリンパ節への転移の程度)だけではなく、 がんの性質(ホルモン受容体やHER2タンパク)をよく見極める必要があります。これらは針生検や手術標本を用いた病理組織検査で判定します。その上で、どの薬物療法が選択肢として挙げられるかを検討します。

◆抗がん薬はがん細胞に働くため、ほとんど全ての乳がんに適応となります。
◆ホルモン療法は、ホルモン受容体陽性のタイプのがんが治療の適応となります。ホルモン受容体が陰性の場合はホルモン治療の効果が期待できません。

薬物療法の標的

◆抗HER2薬はHER2タンパクが多数みられるタイプ(HER2陽性タイプ)のがんが治療の適応となります。HER2陰性のタイプでは適応となりません。

それぞれの治療を単独で受ける方もいれば、組み合わせて受けられる方もいます。同じ乳がんといっても、さまざまな治療の組み合わせが存在することになります。 患者さんそれぞれに適した治療は主治医から提示致しますが、ここではそれぞれの治療法をご説明します。

術後薬物療法について

乳がんは、できはじめの早い段階からがん細胞が乳房以外の場所に移動する(転移する)性質があることがわかっており、手術で目に見える病気を取り除いた後に体のどこかに目に見えないがん細胞が残っている可能性があります。 それが増殖することを再発といいますが、術後は再発を予防するための治療をうけていただくのが一般的です。
京大病院では一つ一つの症例を乳腺外科、腫瘍内科、放射線科、病理診断科それぞれを専門とする医師らで検討し、術後治療について決定しています。

術後ホルモン療法について

ホルモン治療は、ホルモン剤を使用することによって作られる女性ホルモンであるエストロゲンを減らしたり、乳がん細胞内のエストロゲン受容体とエストロゲンとの結合を邪魔したりして、がん細胞の増殖を防ぐものです。
体内での女性ホルモンの状況は閉経前と閉経後で大きく異なるので、薬剤もそれにあったものを使用します。

閉経前:月経がある状態です。ただし、子宮や卵巣の手術を受けた方で月経のない方でも、片方の卵巣が残っている場合はホルモンの分泌は維持されているので、検査でホルモンの状況を確認することがあります。

閉経期:1年以内に月経があったが、周期が不順となり、終了したかどうか不明な状態です。検査でホルモンの状況を確認します。

閉経後:年齢が60歳以上か、45歳以上で過去1年以上月経がない場合、あるいは両側の卵巣を摘出している場合です。

ホルモンの状況によって、使?する薬剤と期間を決めます。ホルモン治療は長期間にわたり、通常でも2年から5年、患者さんによっては10年間受けていただくこともあります。

術後化学療法について

遠隔転移のない場合、再発率、死亡率を低下させるために術後化学療法を行うことがあります。適応となる患者さんは、基本的に「乳がんと診断された方へ」でご紹介した病型分類に基づいて決まります。

術後化学療法

上の図の分類で、Luminal Aタイプのみが化学療法は不要とされています。しかし、この原則の他にもリンパ節の転移の状況や患者さんの年齢、基礎疾患など、様々な情報に基づき、再発リスクと治療効果を予測した上で化学療法の適応を決定する必要があります。
HER2陽性(ホルモン受容体陽性・陰性いずれも)では抗がん薬とともに抗HER2薬が、Luminal Bタイプ(HER2陽性・陰性いずれでも)では術後化学療法後にホルモン療法を引き続き行うことが勧められます。
化学療法は再発の防ぐための治療として重要ですが、その反面副作用などの問題もあります。担当医師と化学療法のメリット、デメリットについて十分相談し、納得した上で最適な化学療法を受けることが望まれます。

術前薬物療法について

癌の性質や進行度合いによっては、手術前の薬物療法をご提案することがあります。

術前化学療法について

手術が可能な乳がんで、術後に化学療法が必要とされる患者さんでは、手術前に化学療法を行っても手術後に行っても、治療成績は同じであることがわかっています。
術前化学療法のメリットは以下の通りです。

  1. 薬物療法によって腫瘍の大きさを小さくし、乳房温存を可能にする
  2. 癌に対する薬物の効果を見ながら治療するため、自分の癌にどの薬物が効果的なのか、確認することができる
  3. 特にトリプルネガティブ乳癌やHER2タイプの乳癌で、術前薬物療法によって癌が消失した場合、予後が良いことがわかっている

ただし、治療の効果がない場合は癌が進行してしまうというデメリットもあるため、慎重に効果を見極めながら治療を進めることが大切です。
京大病院では60歳未満のトリプルネガティブ乳がんに対する術前化学療法で、標準的な薬剤にシスプラチンを上乗せして使用する適応外医薬品臨床使用を行っています。 シスプラチンは日本では乳がんへの保険適応が認められていませんが、欧米では標準治療薬のひとつです。これによって特に50歳以下の方では、 今まで国内や海外で報告されているデータよりも高い割合で、抗癌剤化療後の癌の消失を認めています。対象となる方には担当医より詳しくご案内します。

術前ホルモン療法について

ホルモン受容体陽性で癌の増殖力の低いタイプの乳がん(Luminal Aタイプ)では、術前にホルモン療法を行うことで癌を縮小させる効果があることがわかっています。 術前ホルモン療法のメリットは、癌が縮小した場合に当初乳房温存が困難と思われた患者さんでも乳房温存が可能になることです。 ただし、閉経前の患者さんへのホルモン療法はデータが非常に乏しく、一般的ではありません。また、薬剤の選択や最適な治療期間については定まった見解がなく、 現在も様々な臨床試験が進行中です。京大病院でもいくつかの臨床試験が行われています。

このページの上部へ
京都大学医学部附属病院乳腺外科TOPページへ